刺絡療法を含む鍼灸治療の安全性の評価:インシデントレポートを用いた前向き観察研究
中川素子、大川祐世、山見宝、角藤裕、山下仁、山岡傳一郎
日本統合医療学会誌 第18巻2号(2025)73-80
(以下、論文要旨を一部改変)
特殊鍼法の一つである刺絡療法を含む鍼灸治療の安全性を評価するため、愛媛県立中央病院漢方内科鍼灸治療室でインシデントレポートを用いた有害事象の前向き観察研究を実施した。2017 年12 月から2024 年11 月の7 年間で、鍼灸治療を受けた全患者は1,269 名(施術数23,740)、そのうち刺絡療法を受けた患者は1,171 名(施術数21,318)であった。
報告された1,249 例のインシデントのうち、解析対象となったインシデントは1,188 件であった。すべての鍼灸治療における有害事象の発生頻度は3.1%(741 件/23,740 例)、刺絡療法を実施した鍼灸治療における有害事象の発生頻度は0.3%(58 件/21,318 例)であった。注目すべき有害事象は皮下出血や一過性の気分不良、施術者の針刺し事故などであり、重篤な有害事象は報告されなかった。
医療安全の基本を遵守した刺絡療法において患者に起こる有害事象は軽微で一過性であり、重篤な有害事象の発生はまれであることが示唆された。